はじめに
HTMLは、今日のウェブの中核を成すマークアップ言語として、その歴史は非常に興味深いものがあります。当初はたった20個ほどのタグから始まった言語が、時代とともに進化を遂げ、現代のウェブ体験を可能にするまでに至りました。この言語の軌跡を辿ることで、インターネットの発展と密接に関わってきたHTMLの重要性が明らかになるでしょう。
HTMLの誕生

HTMLの物語は、1989年にスイスのCERN研究所で働いていたティム・バーナーズ=リー氏によって書かれました。当時の課題は、研究者同士で情報を効率的に共有する方法を見つけることでした。そこでバーナーズ=リー氏は、異なるコンピューター間で通用するハイパーテキストシステムを考案し、それを実現する言語としてHTMLが誕生したのです。
ウェブの基礎を築く
1990年12月、世界初のウェブサイトが一般公開されました。このサイトには、HTMLで記述された情報と、他のリソースへのハイパーリンクが設けられていました。翌1991年には、最初のウェブブラウザ「WorldWideWeb」がリリースされ、HTMLベースのコンテンツを閲覧できるようになりました。このように、HTMLはインターネットの基盤を築く上で重要な役割を果たしたのです。
日本でも1992年9月に初めてのウェブサイトが公開されました。当時はまだインターネットが一般化していない時代でしたが、HTMLはその後の爆発的な普及を支える基盤技術となりました。
標準化の歩み
HTMLの普及が進むにつれ、統一された標準化が求められるようになりました。そこで1993年、IETFによってHTMLの最初の標準規格であるHTML 1.0が公開されました。この仕様では、HTMLがSGMLの文法に準拠することが定められ、タグの構文などが規定されました。
その後もHTML 2.0、HTML 3.2などのバージョンアップが進み、表の挿入やスタイル指定などの新機能が次々と追加されていきました。HTMLは単なるマークアップ言語から、ウェブコンテンツを豊かに表現する道具へと進化を遂げていったのです。
HTML 4とXHTMLの時代

1990年代後半に入ると、HTMLの仕様策定はW3Cに移管されました。1997年にはHTML 4.0が勧告されました。この仕様ではフレームやスタイルシート、スクリプティングなどの機能がサポートされ、より高度なウェブ体験の実現が可能になりました。
XMLの影響とXHTML
HTMLの発展に大きな影響を与えたのがXMLの登場でした。XMLはデータ記述の標準規格で、HTMLでは既存のタグにXMLの厳密な文法が導入されました。そしてXHTMLという、XML準拠のバージョンも策定されることになりました。
XHTML 1.0は、HTML 4.01の機能をXML化したものでした。文法的にHTML 4.01との違いはほとんどありませんでしたが、XMLの特性を持つことで、今後の拡張性が高まりました。その後のXHTML 1.1では、複雑で厳格なモジュール設計が導入されるなど、HTMLの枠組みは大きく変わっていきました。
WebとXHTMLの行方
一時期、XHTMLがウェブの次なる標準になると考えられていました。しかしながら、XMLの徹底した構文チェックなどから、ウェブ制作者にとっては扱いづらい側面もありました。そのため、ウェブの発展にXHTMLと決別する流れが生まれました。
結局のところ、XHTMLはリッチなWebアプリケーションの開発を目指す過渡期の技術に過ぎず、その役割は次第に薄れていきました。一方でHTMLは、根強い人気と汎用性から生き残り、さらなる進化を遂げることとなります。
HTML5の台頭

2000年代に入ると、ウェブはリッチなアプリケーション化が進んでいきました。そこでHTMLの次なるバージョンとして、HTML5の開発が本格的に始まりました。HTML5は従来のバージョンとは一線を画す、大きな進化を遂げた新しい規格となりました。
豊富な新機能
HTML5では、これまでのバージョンにはなかった多くの新機能が導入されました。動画や音声の再生をネイティブでサポートする「video」や「audio」要素、2Dグラフィックスを扱う「canvas」要素、オフラインアプリケーションを実現するための機能など、HTML5はウェブアプリケーションの能力を飛躍的に高めました。
また、意味論的なマークアップの重視や、アクセシビリティ向上、マルチメディアコンテンツへの対応など、様々な面でリッチでユーザーフレンドリーなウェブを実現する設計がなされています。
標準化の経緯
HTML5の標準化は、当初W3Cが主導していましたが、その後WHATWGが加わり、両組織による共同作業となりました。長年にわたる議論を経て、最終的にHTML5の仕様は完成しました。
しかし一方で、W3CとWHATWGの路線の違いから分裂も起こり、現在ではWHATWGがHTML Living Standardの策定を主導する形となっています。HTML標準の行方には多くの曲折がありましたが、結果としてHTML5は幅広く普及し、現代ウェブの土台を築くこととなりました。
ウェブの進化に貢献するHTML

長年の歴史を持つHTMLですが、現在に至るまで常に時代の要請に応えながら進化を遂げてきました。HTMLは、マークアップ言語としての役割を果たすだけでなく、ウェブそのものの進化を促してきた重要な技術だといえるでしょう。
標準化と各ブラウザの対応
ウェブブラウザベンダーによるHTMLの実装は、かつては事実上の標準となっていました。しかし、ブラウザ間での非互換性が問題となり、標準化の重要性が高まりました。 HTML5の標準化プロセスでは、各ブラウザベンダーが仕様に関与するなど、実装との整合性を重視する取り組みが行われています。
一方で、新しい機能に関してはベンダー間で実装の遅れが生じることも多く、その対応にはプログレッシブエンハンスメントという考え方が役立ちます。このように、標準とブラウザの挙動を意識しながら、ウェブ制作を行う必要があります。
ウェブの可能性を切り開く
HTMLは目覚ましい進化を遂げてきました。特にHTML5は、ネイティブなマルチメディア対応、オフラインアプリケーション化、グラフィックス描画、進化したセマンティックウェブなど、ウェブの可能性を大きく広げた画期的な規格でした。
今後もHTMLは進化を続け、WebXRやWebGPU、WebAssemblyなどの新しい技術と連携しながら、ウェブアプリケーションのさらなる進化を支えていくことが期待されています。HTMLは、ウェブの基盤技術として、これからもその重要性を増していくことは間違いありません。
まとめ
今回はHTMLの歴史について、その誕生から標準化の経緯、HTML5の登場までを振り返ってきました。HTMLが長年にわたって進化し続けてきた背景には、インターネットの発展やウェブ体験の向上へのニーズがありました。
HTMLは、単なるマークアップ言語を超えた、ウェブの基盤技術となりました。今後も新しい技術と連携しながら、ウェブの可能性を切り開いていくことが期待されています。HTMLの歴史を知ることで、この言語の重要性と、これまでの発展の軌跡を理解することができるでしょう。

